
びその周辺領域の教育に焦点を合わせて概説する。ところで在来学部における改革といったばあい、そこにはいくつかの段階を設定することができる。
まず第1に、従来法律学科のみを設置していた法学部に政治学科を新設するという流れである。法律学科のみの法学部では、行政学担当の専任教員を配置していないどころか、行政学という科目すら存在していないこともある。したがって、政治学科の新設は直接的には行政関係科目の重視につながらないけれども、日本の行政学が政治学の1分野として扱われてきた伝統からすれば、方向性としては関連科目の配置等が実施されている傾向がある。
第2に、法学部あるいは類似の学部に行政あるいは政策関係の学科を設置するという試みである。これも90年代以降にみられる1つの潮流であり、学部新設をともなわない形式での改革である。従来法律学科のみの法学部に政治学科ではなく行政学科を設置する例、政治学科を行政学科に改組する例、法文学部の全面的学科改組による総合政策学科設置の例などがある。
第3に、従来の政治学科における「コース制」の導入による行政・政策関係科目履修への誘導である。これについては、法律学科においても「行政」「政策」の名称を入れ込んだコース制導入の例もあり、改革が法律関係学科にも波及していることが伺える。
以上のような在来学部における改革の流れにはいくつかの背景が考えられる。環境変化にともなって多様な社会的ニーズが現出し、公共部門に対する要請が高まっていることや、80年代以降の行政改革の潮流によって行政に対する関心が高まっていること、公務員試験志望者の増加等がその一例であろう。以下、本章では便宜的にこれら3つの段階にしたがって概説することにする。なお、本章において大学、学部、学科の設置を年でしめすばあい原則として初年度学生受け入れの年を基準としている。また、本章で主として取り上げる大学学部一(学科)のカリキュラムについては、巻末資料を参照されたい。
2. 政治学科の新設増加
行政学が政治学科において論じられることも、また政治学科の多くが法学部に設置されていることも日本的な特徴であるかもしれない。しかし現実に行政学者の大部分が法学部政治学科に所属している。したがって、日本の行政学教育をみわたすには、まず政治学科(政治経済学部を含む)の動向に着眼しなければならない。
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